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熟成するシニア世代 その26

 高齢者問題を扱ってきたが、どんなものでも放っておけば傷んでくる。住宅も人が住まなくなって、換気や掃除をしないと傷んでくる。ものを大事にしまっておくには保存環境をきちんと保つことだ重要だ。「経年劣化」という言葉があるが、人間も同じ気がする。健康を守るというけれど、今ある体の組織を守るというのは間違っている。人の細胞は毎日傷んだり弱ったものは処分され新しいものと入れ替わっていく。使わなければ、必要ないものと判断され更新されなくなる。

 コロナ騒ぎで、自粛生活を余儀なくされ、久しぶりに握力を測ったらぐんと落ちていた。今日は中学生の部活指導に行って、生徒と一緒にスクワットをやった。シニア世代にとって、健康を維持することはとても関心の高い問題だが、劣化させないための努力というのはかなり意志の力がいる。

 「人格も日々更新」これは、指導している混声合唱団に呼びかけている言葉だ。身体だけでなく、心も劣化する。私が最後に勤めた三輪小学校の学校目標は、

「体を動かし、頭を働かせ、心に感ずる」

というとても覚えやすいものだった。小説家の臼井吉見氏の講演からヒントを受けて作ったそうだが、シンプルなのにとても大事なことをきちんと押さえてあるように思い、好きだ。

 シニア世代にとって、経年劣化などと言われないように継続した内容で体を動かし、なんとなくではなくて自分なりに「シミュレーション」して活動し、しかもその成果を「フィードバック」する。そんな生活の中で、自分らしさや仲間とのつながりを感じ、自分が生きていることを素敵なことと思えるそんな日々を送ることが大事だよとこの目標は教えてくれている。

 高齢者の弱点は確かに劣化していくものがあることかもしれないが、戦後の大きく変わる日本を支えてきた世代だ。その経験や育んだ能力をなんとか活かし、ますます味のあるものにしていきたいものだ。「熟成」とは、環境を整えることで、柔らかさや旨みが増すことだ。長い人生を歩んできたからこそできることがあるはず。欲張らず味わいのある自分らしい人生を発信してほしい。

(続きは、講演が済み落ち着いてから再開します)