タモリ(森田一義)が若い時から、昨日紹介したように達観していたかと言えば、おそらくそうではないだろう。いろいろな失敗・悩み・ストレスに出会って、独特の言い回しで世の中を面白い方向から掴む技を見つけてきたのだろう。
「コツはね、張り切りすぎないこと」
「人見知りじゃない奴は面白くない。」
この言葉でほっとする人は多いだろう。カインドフルネス(利他の心)を感じる。相手の個性・生き様を暖かく受け止めようとすることほど、社会のルールで大切なことはないのではないだろうか。
「前を向いて歩いたって、つまんないよ。後ろを振り返ったほうが『あれが楽しかった』ってたのしいよ。」
「明日のことを語れるヤツはいるが、昨日までのことをキチっとやれるヤツはほとんどいない。」
「人生に勝敗なんてないし、どっちがいいとか悪いとか、そんなことなんてどうでもいいんだ。」
「一度や二度挫折したって、『どうせ俺なんかいい加減なもんじゃねえか』そう思えるヤツは、やっぱり強い。」
教育の道で私が大切にしたことは「メタ認知力」の向上。もう一人の自分になって自分の姿を見つめ、良い点・頑張っていることを認識し、次の一歩へつなげていくのだ。これは昨日の「選択する自由」とつながるのではないか。タモリの言うところの、「後ろを振り返った方が」というのは、自分の歩んできた道を振り返り、すてきな自分、頑張っている自分を見つめようということだと思う。「昨日までのことをキチッと」は、今置かれている自分の状況、やるべきことをないがしろにせず、自分の持てる力で精一杯やっているかということだろう。そして、挫折したって、「お前はよく頑張っているよ」「それがお前だよ」と自分を認め、支え、次の一歩へ背中を押すのが、本当に強いということだと思う。
「特に若い時は仕事を選んでられない。色々くる仕事を全部一応やってみる事も大切なんじゃないかな。」
「いまだに何かをわかったわけでもなく、ただ迷いつつ手探りでやり続けております。
「全部一応やってみる」ということは、「選択しないでやれ」ということかと思う人もいるかもしれないが、逆だと私は思う。若いうちは、わかったふうのことは言わないで、自分の可能性に挑戦し、体験を通して自分を見つめることは「大事な選択」だと思う。そして、最後の「ただ迷いつつ手探りで」は、「初心忘るべからず」の心で、棺桶に入るまで学び続けるシニア世代に生き方を示しているのではないだろうか。(続く)