牧野篤(東京大学大学院教授)さんの行ったシニア世代の意識調査が参考になった。2001年と2007年に「シニア世代の関心事と価値意識」について調査した分析が、勁草書房「シニア世代の学びと社会」に紹介されている。
2007年調査で、シニア世代の関心が高いのは、「健康」「趣味」「家族」「ボランティア・社会貢献」「経済」「仕事」「その他」であった。これはほぼ2001年調査と内容的に重なる。「経済」が加わったことと「その他」が増えたことで、より多様性の広がり、経済的自立の関心が重くなったことはわかる。
また、2001年調査では自分が生かされてきた社会との関係を大事にし、「恩返し」という傾向が強かったが、2007年調査では、社会で生かされてきたことは大事にしつつも、楽しく前向きで、自分自身の充実のために関心ごとを見つめている傾向がある。牧野先生は「ある種の自己中心性」と表現している。
そして、2007年調査より10年以上過ぎた現在のシニア世代は、70代前半から60代の戦後世代が多くなった。ますます「前向きに、自分らしく、活力のある生き方をしようとするその「自己中心性」傾向が強くなっていることがうかがえる。
昔は、地域の役員もお互い同士よく知っていて、先輩後輩協力し合ったものだが、最近は、近所でも名前も知らなかったり、回覧を回す程度の付き合いだったりが多い。趣味の活動もしているが、地域の仲間というよりは、目指す内容を共有できる友達関係、同窓生やサークルで一緒だった人など、離れた関係者で行っていることが多い。
地域社会の課題解決にとって、このあたりの意識の変化も気をつけて見ていかなくてはならないと思う。行政が地域組織に投げかけることは当然多いが、健康・趣味・ボランティアなど様々な仲間組織(サークルやNPO法人なども)があるので、そういったものとどうつながっていくか、そのパワー、組織力を活用していくかも大事なのだろう。(続く)