団塊の世代を中心とする高齢者が退職し、年金を支えに老後を過ごし、年々医者にかかることが多くなったり、介護を要するようになったりと社会的支援が必要になった時、誰がどのようにそれを支えていくのかまさに2000年代前半の課題だ。
それを担っているのが基礎自治体(行政の最小単位、市町村)だ。国は財政の厳しさから構造改革を行い、日本中で平成の大合併が起きた。さらに地方交付税・補助金削減など、従来の利益誘導型の政治から、いわゆる「不利益分配」型の政治への転換で、自立を迫られる基礎自治体にとっては、高齢者を引き受けることは大変困難を伴うことである。当然、高齢者の自立を促し、共存を図ろうとする動きになっている。(参考:牧野篤著「シニア世代の学びと社会」)
やるべきことを整理すると、「生涯学習を重視し高齢者の自立と生きがいづくりに取り組む」、「健康増進をはかり余生を謳歌できるようにする」ことなどがあげられる。そして社会的負担を軽減し、社会的資源として活用することで、新たな多世代共生の地域コミュニティを形成しようとする施策が求められている。
私は社会教育主事として公民館職員の指導などにあたってきたが、長野県は全国一公民館数が多く、活動するサークル数も多い。長寿全国トップレベルの理由がその辺にあるように思う。それだけでなく、退職後も働いている人の割合が高く、その上、健康診断等の受診率も高い。
それは、まさに上で説明した国をあげてこれから目指すことと重なっている。長野県はよくやっているのだ。しかし、残念ながら役所の一部や地域の声には、「公民館は年寄りの趣味の場だ」などと、社会教育関係予算を減らそうとする動きもあることも事実だ。
戦後公民館がスタートした原点は、「二度と戦争をしないような立派な国をつくるため大事なことは、国民一人一人がしっかり学ぶこと、物事を正しく見つめる力を持つこと」だと考えたことにある。現代において、「生涯現役」を求められる背景や、シニア世代が戦後頑張ってきた経験や能力をどう活かしていくか、さらに見つめていかないといけない。(続く)