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老いの研究 その16

 脳疾患で心配なのは、やはりアルツハイマー病・認知症だ。脳にはニューロン(神経細胞)があり、ネットワークで様々な情報をやり取りし記憶を担っている。そのニューロンの間を埋め、ニューロンに栄養を供給するなどして活動を支えているのがグリア細胞だ。そしてそれらの細胞の間を動き回り、ニューロンの状態を調査したり、傷ついたところの修復や除去をしているのが「ミクログリア細胞」だ。マウスの神経細胞の一部に血流を止めるなどして障害を起こす実験をしたところ、ミクログリア細胞は、神経細胞のつなぎ目のシナプスに腕を伸ばして1時間以上にわたって検診をしていたそうだ。本当によくできている。

 アルツハイマー病は、“アミロイドβ”とか“タウ”といった脳内の有害なゴミの蓄積が原因とされる病気で、40代前後からその蓄積は始まり、発症する頃にはもうそれ以上蓄積しない程度まで溜まっているらしい。やはり早期発見・早期治療が大切だ。ただ、進行を遅らせるような対症療法は進んでいるが、根本的な治療は難しい。

 脳の中では、アミロイドβのようなゴミは、先ほどのミクログリア細胞が食べてくれるというか清掃してくれる。しかし、あまりに蓄積が進むとミクログリアは、脳が攻撃されていると判断し、反撃するために炎症を起こす物質を放出し、その結果、逆に多くのニューロンが死に至てしまう。これは最近話題の新型コロナウィルスに対する免疫力が過剰に反応し、宿主である人間の肺まで殺してしまうのと同じだと思った。

 病気の仕組みを知ったからといって防げるわけではないが、自分の日頃の生活や体の状態に関心や正しい知識を持つことが、早期発見につながるし、脳のゴミが蓄積しにく生活を送ることにつながるだろう。そこで、明日はもっと原因と対処法を研究していこう。どうも昨日ふれた「音楽」や「会話」「料理」などが重要なようだ。(続く)