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老いの研究 その11

 記憶力を高める(いやシニア世代は記憶力を衰えさせないかな)ためにどうしたら良いかはとても関心がある話題なので続けよう。人が忘れられない記憶として残すのは、①とても衝撃のあること ②ワクワクすること ③しっかり復習する などの要素があるだろう。日々の生活でこれを実践するとしたら③の「しっかり復習」だろう。前々回(その9)のブログで1週間に復習3回について触れた。その記憶の処理は「海馬」の役割が大きい。

 視覚・聴覚・味覚・触覚など体のいろいろなところから集められた情報の処理をするのが海馬だ。情報の統合をし、価値・重要度を判断し脳の然るべきところへ格納していく。それを読み出すのにもしばらくは海馬の働きが必要になる。以前に紹介したが、複雑で迷路のようなロンドンの街を走るベテランタクシードライバーの海馬は経験年数に応じて成長しているという。脳の細胞は基本的に増えないが、海馬は必要度に応じて成長するというのだ。

 また、神経細胞(ニューロン)のネットワークによって記憶は保存される。脳の中に1000億個もあるという神経細胞は電気信号をやり取りするためにたくさんの腕(軸索)を持つ。そして他のニューロンとその信号のやりとりをするつなぎ目がシナプスだ。記憶をするとき、そのシナプスが大きくなって保存される。逆に小さくなって記憶が忘れ去られていくものもある。

 記憶力を維持するために日々なんとなく過ごすのとは違う情報との向き合い方が大事だ。それは誰しも思っているだろうが、実践につながりにくい。散歩に行っても知らない道を楽しんで歩くことでタクシードライバーのように海馬が働く。毎日同じ道を通勤するのとは意味が違うのだ。(続く)