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老いの研究 その8

 人体について興味を持って調べてみると思いのほか飽きない。最近新型コロナウィルスのことでニュースが大部分を占められている。まるでウィルスは存在してはいけない悪魔のように皆が認識しているが、先日面白い番組を見た。NHKのヒューマニエンスという番組で、「ウィルスは天使か悪魔か」というテーマで扱っていた。

 印象に残ったのを紹介すると、哺乳類が子供を産むのに、胎盤が大きな役割を果たしているが、胎盤が出来上がるためにウィルスが大きな役割をしたというのだ。恐竜の時代、我々の先祖はまだ卵で子孫を残していた。しかし、それは大変生き残る効率の悪い方法だった。ある時代にウィルスがその祖先を死に追いやったが、宿主である生き物が死ねばウィルスも生き残れない。そして、そのウィルス由来の遺伝子が宿主に大きな変化をもたらす。お腹の中で子を育み出産する哺乳類の仕組みができ、高度な生き物へと進化(変容)してきたというのだ。その変化が途中のような形で終わっているのが、カンガルーのような有袋類だという。これは胎盤の働きが不十分なため、未熟児を産むので、自分のお腹の袋で育てるという。

 このウィルス由来の遺伝子は、PEG10(ペグテン)というのだそうだが、これが働きにくいようにして動物実験したところ、未熟児が生まれたというのだ。他にも脳や筋肉いろいろなものに過去に体内の入ったウィルス由来の遺伝子の働きが残っているらしい。

 ニュースでウィルス変異と言っているが、一つのウィルスが賢く生き残りを図っているように聞こえてしまう。遺伝子をコピーしていく中でいろいろなミスというか違うものがたまたまでき、その何種類もの中で、環境にうまくあって生き残ったものが勝っていくのだ。宿主側も長い歴史の中で、取り込んだ遺伝子からそれまでにはなかった体の仕組みの変化させ、進化と言えるような結果を出した生物が発展してきたのだ。

 老いの研究とは次元の違うような内容になってしまったが、生きるということの仕組みを掘り下げていくと面白い。昨日の「老衰という死因はない」の言葉を重く受け止め、自分の体と向き合っていかなくてはいけない。(続く)