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幸福な老い 身体編その6

 1年以上にわたって収まらない新型ウイルスのために「自粛」「在宅」などの言葉がニュースで頻繁に使われる。体が鈍っている不安は多くの人が感じているだろう。高齢になってくるとそれは取り戻せない体の老化だったり、病気の引き金だったりととても懸念される状態かもしれない。

 テレビをつけるとあちこちで色々な体操を扱っている。それぞれどのような効果があるかなど説明をつけてやって見せているが、なるほどと思うだけであまり実際の生活につながらない。YouTubeでも健康づくりに特化した発信をしているものがたくさんある。あるユーチューバーは、歳をとってくると体が硬くなってくるので、ストレッチは普段使わない筋肉を無理に伸ばすと危険だから、ラジオ体操のようなリズムに乗って動かすような運動の方が良いと説明していた。なんとも情報がたくさんであまりハートに響かなくなってきているような気もする。

 やはりきちんと入ってくる情報を整理し、そのポイントを自分の体で納得し、継続することが大切だと思う。ノルディックウォーキングが評判になり公民館などでも扱われているが、たまに実際やっているお年寄りを見かけると腕がほとんど振られておらず、なんのためにポールを持っているのかわかっているのかなと心配になる。

 ラジオ体操はとても体全体のバランスをよく考えた内容で、日本人ならほとんどの人が知っていて、初めて会った人とも一緒にできる良い運動だと思う。ただ、それぞれの動きの狙いを考えてやらないと単なる体ほぐしにしかならない。例えば、2つ目の腕を振って足を曲げ伸ばす運動は、手を体の前でクロスした時に、踵をあげるのだが、ほとんどの人がやっていない。試してみるとわかるが、踵を上げて膝を曲げるのはかなり筋肉やバランス感覚に負荷をかける。また、8つめの腕を上下に伸ばす運動は、真上に手を突き上げるのだが、軽くバンザイをする程度の動きになっている人が多い。腕を真上に鋭く突き上げるのに合わせて、踵をあげ、膝も肘もかくっと伸ばさないといけないと思う。

 私は「似て非なるもの」という言葉をよく使う。物事は、その核心というか重要なポイントを意識して行うから価値があるのであって、単に真似をしてやっているだけではなんの意味もないと思う。どうせやるなら本物に迫りたい。(続く)