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幸福な老い その9

 サクセスフルエイジングについて考えてきた。いろいろな要素があり、それぞれについて掘り下げて研究しなくてはいけないのだろうが、結局「楽しく」「ポジティブに」など、同じような意識の持ち方に落ち着いてしまう。それが何を引き出し、何を与えてくれるかが大事なのだろうが、また後日見通しを立てて掘り下げてみよう。

 今日は、去年の山の方の公民館で出会ったおばあさんの話をして、この幸福な老いのまとめにしたい。

 私の指導する「歌と健康セミナー」の3回講座の2回目から参加してくれたその人は、おそらくお歳が80代の後半かと思う。講座が終わるとうれしそうに寄ってきて、参加して良かったとうれしそうに何度も言ってくれた。なつかしい歌を歌い、普段はあまりやらない姿勢を伸ばす運動をし、腹から声を出すのが気分良かったようだ。そして、3回目はお餅をついて持って来ると語ってくれた。何か喜んでくれるお礼をしたくてそう言ったようだ。

 その人は、ご近所の仲の良いおばさんに、1回目は面白かったから今度一緒に行こうと誘われたそうだ。そういうことはよくあることだが、私がいいなと思ったのは、その誘ってくれたおばさんと仲が良く、車の運転のできないおばあさんは、たびたび一緒に出かけるようだ。高齢になって、子供たちと離れて過ごすお年寄りは、本来なら畑仕事でもコツコツやって、誰とも会話もせず一人で過ごす例が多いのが現実かと思う。しかし、そのおばあさんは仲間を作るのがうまく、さそわれて出かけ、初めてのことにも楽しかったと取り組んでくれる。そして、いただいたお餅は市販のものと違って、すぐ火が通り見事にふくらんでおいしかった。

 明るく、いろんなことに楽しく取り組み、うれしいと一生懸命それを伝えてくれて、お返しをして喜んでもらいたいと…。そんなことの繰り返しの毎日なのだろう。無心で当たり前のようにそんな老年期を過ごしたいものだ。