退職して社会的な関わりといえば趣味の付き合いが重みを持ってくる人が多いだろう。それも無く、家でなんとなく過ごしているのはいろいろな面で危ないので、ぜひ工夫して何か興味の持てることを探して欲しい。できれば、一人でコツコツやるようなことだったとしても、同じ趣味の人と交流するとか、社会的なつながりは大事にしてほしい。
趣味の世界を楽しく過ごすにしても、その楽しさにはレベルがあるように思う。おしゃべりしたりゲームをしたりとそのまま楽しいこともあるが、仲間とつながったり、みんなのお世話にしたりなど、役に立つことで価値が高まることも良い意味での「楽しみ」だ。私は、名簿上は100人近い男声合唱団に退職してから所属している。最初はヒラの団員だったが、パートリーダーになり、しばらくしてパートリーダーを束ねる技術部長になり、演奏面での責任者として仕事をするようになった。演奏会のプロジェクトは毎回のように協力しているし、他の団体との共演など大きなイベントのリーダーもやった。社会教育の専門家としての経験を活かして、団の運営面でも役員さん達と連絡を取り合って自分なりに喜ばれる団体づくりに取り組んでいる。明日も、コロナ騒ぎで練習ができないので、リモート役員会を開いて今後の相談をすることになっているが、事務局長に呼びかけたのは私だ。
苦労を背負い込んでいるように思う時もあるが、社会的な自分の位置をそうやって大勢の人に認められているのは、自身のアイデンティティーを高める大切なことだ。それは、「楽しみ」と言って良いと思う。
私がたびたび参考にしている牧野篤先生の「シニア世代の学びと社会」(勁草書房)では、「ちょボラウォーキング」という活動を紹介しているが、ウォーキングをしながら川辺のゴミ拾いをするらしい。そういった社会参加というか、社会貢献の立場を味わうこともシニア世代には大事な「楽しみ」なのだと思う。(続く)