· 

幸福な老い その2

 サクセスフルエイジングについて考えていこう。老年期心理で触れたように大きく3つの観点から見ていく。「社会的変化」「心理的変化」「身体的変化」の3つだ。

 勤め人にとっては、退職によってまず大きな社会的変化が起きる。自分の居場所というか立ち位置を自分で決めていかなくてはいけない。スマートエイジングの研究では、「年金以外の収入を得る」「他人の役に立つことをする」「明確な目標を持つ」「自分の好きなことをする」という4つの視点でそれを提案している。

 まず、「年金以外の収入を得る」ことができれば、生活に余裕が生まれるし、引きこもり的な生活にならずに頭も体も使うことだろう。スマートエイジングの本では、“葉っぱビジネス”と“長野県のおやき”が紹介されていた。地域にそのような高齢で参加できる仕事の場があるのは大事なことだろう。

 私は、今日も市教委へ行って来年度の公民館講座の計画を打ち合わせてきたが、あと何年できるのだろうか。基本的には、地域の財を活かすとか、自身のこれまでの経験を活かすといった仕事になるだろうが、自身で全く新しい世界へチャレンジするのも面白い。NHKの逆転人生という番組で、先週「人生100年時代のマルチステージ」について扱っていた。私も講演で扱うなど興味のあることだったので面白かった。

 ある中年女性だが、自分の経験を活かして活躍できる仕事を探すというより、全く経験のない世界に飛び込むことで、むしろ新鮮なアイディアを発揮して認められるような体験談を紹介していた。貸し出しのない結婚式場で三味線の演奏会をやった事例では、担当の係が「だめ」を出すのに、「なぜか」と何度も食い下がり、特例でやらせてもらったらとても評判になり、表彰されたそうだ。経験ある人が「そんなことはありえない」と仕事を止める例はどこにもある。一つの仕事に追われるだけでなく、色々な場(人生のステージ)で、色々な人と出会い、無形資産を増やしていくことが、その人に新鮮な気持ちで生きる喜びを与えてくれるのだろう。「退職したから終わり」ではなく、まったく経験のない世界を楽しめれば面白そうかなと思うのは私だけだろうか。(続く)