前回の続きで脳の細胞の更新について触れてみよう。脳の老いとの戦いは誰しも「怖い」というか心配なことだろう。脳の老化は、身体の全ての機能に影響する。最近よく話題になる認知症は、最も家族に迷惑をかけそうで不安な病いだ。
専門書によると、脳の老化の原因として「血液や栄養分の供給量の低下」と「神経細胞の変化」が大きな要素らしい。加齢による脳容積の減少(萎縮)は、20代から始まるということだが、まるでそれでは成人したら勉強する意味はないと言われているようで悲しい。研究が進む中で脳の働きはそんな単純なものではないようで、今後の研究の進展によって、さらに治療法や進行を遅らせる対策が明らかになるのを期待したい。
私が「歌と健康セミナー」で紹介した脳の話で、“海馬”のことが面白い。ロンドンの複雑で迷路のような道を走るタクシー運転手の海馬を調べたら、キャリアの長いベテランほど海馬が発達していたというのだ。海馬は、記録の入り口で、位置把握能力を担っている。それが仕事を長くすることで発達しているということだ。
名古屋大学の研究でも、海馬やその周辺の容積は45歳ごろまで増大することや、45歳〜50歳以降、脳の領域の情報伝達効率はむしろ高くなることもあるということがわかったらしい。タクシー運転手の例に顕著だが、脳の老化は生活環境や当人の日々の過ごし方に大きく影響されることは明らかだと思う。
自分のことを思い返すと、講演や合唱団指導、教育相談などのために色々な専門書などを読んでいるが、それは単に材料集めではなく、自分の老いとの戦いと言える。学び続けることを大事にし、物事の真髄に触れていく面白さを味わうことで、世の中の見え方が変わってくる。その価値をこうやってブログで形にして表現していくのはやめられない。やはり意識や心理に目を向けてこの老いとの戦いをまとめていこう。(続く)