青春期におけるアイデンティティクライシスについて続けたい。自分の将来についてどのようにどのような道を選択するかは、誰しも向き合う人生の大きな課題だ。アイデンティティの状態を4つの分類でとらえた研究がある。
1 アイデンティティ達成型 アイデンティティクライシスを経験し、自分自身の価値観や世界観を見つけ、それに基づいた信念に従って行動している。
2 モラトリアム型 アイデンティティクライシスの状態から抜け出せず、自分の価値観や職業について、いくつかの選択肢の中を迷っている段階
3 アイデンティティ拡散型 自分の人生に責任をもつことや、主体的な選択をすることができない。無力感、自己嫌悪感等が特徴
4 早期達成型 アイデンティティクライシスを経験していない。親や世間から期待される価値観を葛藤なしに自分の価値観として受け入れている。(参考:ニュートン別冊「ゼロからわかる心理学」
教育にあたった人間として、これは大事な研究だと思う。小中学校時代、親の考えに従ってひたすら机に向かい良い成績に励まされて張り切っていたが、高校大学と進む段階で、周りの者に追い越され、目指していたことにたどり着けない悩みを抱えた若者が、その不満を怒りに変えて、犯罪行為という形でぶつけてしまうことがある。高度成長期にがむしゃらに頑張った親たちが子供にもそれを要求するが、1980年台から90年台に経済成長が厳しくなる中で、若者たちの不満が行き場をなくして、世話になった人たちを恨み、耳を疑う犯罪となった例をいくつも見た。教員と生徒の意識のずれが顕著になり、新人類だの、勝ち組負け組だの、若者の生き方を否定的に見る風潮も気になった。