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これが自分 その1

「初心忘るべからず」で賢く年を重ねる意欲のある人は、やはり自分らしさをしっかり持っている人が多いと思う。発達心理学で、青春期(10歳から18歳ぐらい)は葛藤や親離れを経験する時と言われるが、その時をどう過ごすかは、本人だけでなく親を中心に周りの人の影響も大きい。だが、それは本題からそれるので後日掘り下げてみる。

 社会へ出ていく準備の期間でもあるこの時期は、「自己の確立」心理学では「アイデンティティー(自己同一性)を確立する」ことが課題となる。アイデンティティとは、文献では、「自分は他の何者ともちがう自分である(斉一性)、「過去、現在、未来にわたって自分は同じ自分である(連続性、または一貫性)」という実感があるということだと説明している。さらに、「これが自分である」という感覚は、自分だけが感じるのではなく、他者からも同じように感じられている(相互性)もアイデンティティーの条件になるとされている。(エリクソンの理論)

 そして、青年期は、急激な体の変化、進路問題・友人関係、恋愛や親子関係の変化など、様々な悩みと向き合い、不安定になる。それをアイデンティティクライシスと呼ぶが、その試行錯誤する期間を「モラトリアム」と呼ぶ。それを経験した後、自分自身の価値観や世界観を見出し、それに基づいた信念に従って行動できるようになれたのを、「アイデンティティ達成型」と呼ぶ。

 ここで面白いと思ったのは、いつか紹介した村井実氏の「善さの構造」と似ている点だ。善さの構造は、「善い」という判断の成立を、「相互性」「無矛盾性」「効用性」の三つの働きから見ている。「相互性」は、上と同じで他者からも同じように感じられていること。「無矛盾性」は、一貫していて矛盾がないことだから、「斉一性・連続性・一貫性」とほぼ同じだ。となると、「効用性」に対応するものがないが、それは効果があるということなので、心理学でいう「自己効力感」に近いと思う。アイデンティティの確立が、日々の生活で自分や社会への効果があるということだ。人生の終末期に向けて、この構造を理解して過ごすことが重要であると思う。今日は理論的な話が多くなったが、今後、私の人生や活動を通して見ていきたい。(続く)