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まことの花 その5

「アンチエイジングという考え方は、若い頃の自分に戻りたい、年をとりたくない、高齢期を認めたくないという、加齢現象をネガティブにとらえたものです。……しかし、今の自分を否定し、過去の自分にすがるアンチエイジングの考え方は、自分自身のこれまでの人生を否定することになります。」(扶桑社新書「スマートエイジング」から抜粋 P6)

「まことの花」について考えてきたが、これは何も自分の経歴にしがみつくことではないと思う。一つの芸の道を極めようとした世阿弥の言葉だが、重要なのは、それに取り組む「心のまま」つまり心のありようなのだと思う。

 合唱を続けている人たちが、発声や表現力を極めようと取り組むことはもちろんだが、いろいろな仲間に出会い、いろいろな指導者に学び、自分の姿を高めてきた、その日々を振り返って欲しい。その取り組みにある価値を見つめ直してほしい。

 私自身を振り返っても、発声や曲の思いをどう込めて歌うかなど、一生懸命取り組んできた。でも、それだけでなく、どうしたらそれを人に伝えられるか、いかに仲間とつながり合唱団としての魅力を発信できるかなど、運営面でも真剣に取り組んできた。そして、それは合唱だけでなく全ての生き方UPにつながっていると思う。

 そんなことを考えていたら、今朝、テレビに92歳のインスタおばあちゃん、西本喜美子さんの話が出てきた。72歳で写真教室に通ってから、面白い発想の写真をたくさん発表して人気者になっている。紹介してあるホームページ(PERSOL Work-Style 2020)を開いたら「行き当たりばったりの人生を楽しみ、今を生きる……」というタイトルで出てきた。でもそれを読んで、何か違うのではないかと思った。「行き当たりばったり」ではなく、何かを求め続けているから、そういうものに出会うのではないか、そこに一本通っている姿勢があるから、そのことの魅力にハマることができるのではないかと思う。何をしてきたかよりも、どのようにそれを自分の素敵なことにしてきたかが「心のままに」で、この人の「まことの花」のように思う。