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人生は自分発見の旅 その21

(続き)メセナ少年少女合唱団の運営体制を見直すことになった。地域の教員仲間から、「次はあなたやって」と依頼されることの連続で、次第に本来の合唱団設立の意味が薄れ、いわゆる「ほっぺた回し」になるのが、どこにでもある活動停滞を起こす要素かと思う。平日は勤務時間を超えて遅くまで教材研究等に追われ、休日も部活動指導がある教師にとって、社会教育活動は「余分な仕事」となってしまうのだろう。

 まず、指導員を教師がやるという枠を外した。地域の人材で音楽指導に興味や指導力のある人を探した。須坂の出身で教育実習に来た大学生が地域に戻ってきた時にピアニストとして依頼したのは良かった。いまだに年賀状でお付き合いもある。大学で地域を離れてみて、改めて自分を育んでくれた地域の文化貢献に寄与できることの重さを感じてくれた。そうやって地域の指導人材を育てることの大切さにも気づかせてもらった。ほっぺた回しではなく、「俺がやるから一緒にやろう、協力してくれ」と、自分も含めた仲間づくりが大事だと思う。自分がそこから外れるために、他の人に回すのではなく、人的資本を広げていくことが重要だと思う。

 私が教頭として長野を離れる時、このメセナ少年少女合唱団をスタートさせた地元出身の音楽教師が逆に教頭として帰ってくるので、指導を代わってもらうことで喜んでいた。しかし間近になって、やはり激務の教頭との兼任は無理と言われて、私の妻を含めて一緒にやっていたスタッフに任せることになった。須坂の教員組織とは別の独立した仲間で運営することになったが、その時の指導員が今でも繋がっている。

 指導員がずっとつながっているので、卒団した子たちもつながっている。社会人になった若者が指導員の補助をしたり、記念演奏会では卒団生のステージがあって、私が指揮をさせてもらったり、親子の団員がいたりなど、体制を整えた成果が20年経って改めて見えてくる。社会教育のあり方がそこにあるのではないか。