コーラスフェスを市民の活動を支援する発表会の場の提供としてスタートしたが、私は、発表会に参加できる人たちは、仲間とすでに活動している人たちなので、本来の目的とはズレがあると主張した。家でなんとなく過ごしている人たちに出てきて、話を聞いたり体験したりする場を公民館で提供し、できればその参加者がフリーでコーラスフェスに参加してくれるよう呼びかけてはどうかと考えた。
その場として「歌と健康セミナー」を企画し、これで3年目になるが、今年は5つの公民館で実施することになった。すでに4つの公民館で終了した。今年の大きな研究材料は「脳科学は人格を変えられるか」という文芸春秋社で発行しているエレーヌフォックス著の書籍だった。セミナーの第1回目に「私は皆さんの人格を変えます」と投げかけると、「えー」と反応がある。それはそうだ。自分はそんなつもりではなく、歌を楽しみたくてきているのだから。
昨年、東京に行った折、国立科学博物館で世界恐竜展を見たが、見事な骨格だった。日頃は目にすることのない骨格だが、長い年月土の中に埋もれてその生きた証を我々に大きな存在として見せてくれる。人間も60兆個の細胞でできていて、毎日100億個が更新されていくそうだ。もちろん骨格も。宇宙飛行士が無重力の世界から帰ると、しばらくその筋肉や骨格を元に戻す努力がいるそうだ。同じように人格だって更新されているはずだ。それぞれ考え方は個性がある。これまでの人生経験が大きな要素としてその人格を作っているはずだ。
家に居て、なんとなく過ごしているのでは、無重力の世界で浮かんでいるようなものかもしれない。目的を持って行動し、人と関わり、自分のやりたいことに楽しく取り組むことが大切。そして、同じ悲しい出来事に出会っても、ポジティブに捉え、前進するエネルギーを起こしてほしい。私が人格を変えるのでなく、それぞれの人が自分の生活・性格を見つめ、日々の出来事にどう向き合っていくか、それで人格は変わっていく。できれば年を重ね、経年劣化ではなく、味わい深く熟成したステキな世代になってほしいものだ。(続く)