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自身のキャリアを活かして生涯現役でいたい

 今日は信更公民館で、歌と健康セミナー第3回目を行なった。セミナーの最終回でまとめの内容だった。高齢期を「知的に円熟する人生の発展期」と定義づけ「加齢による経年劣化に賢く対処すれば、個人・社会は知的に円熟できる」とスマートエイジングの基本を私個人の経験と結びつけながら話をした。その中でこのホームページ開設の根本でもあるシニア起業と関係の強いものがあるので紹介したい。

 米国心理学者のコーエンは、3000人を超える退職者に「人生の意味を感じさせてくれるものは何?」と質問した。ほとんどの人が「他人の役に立つこと」と答えたそうだ。ボランティアで社会に「恩返し」をした人たちは、退職後の生活に最も満足している人たちと重なるらしい。

 逆に、退職後の生活で最も不満を抱えるのは、「現役時代に卓越したキャリアを築いていたのに、退職後にそれに匹敵する充実感を得られない人」だというのだ。現役時代に会社等で役員として人を束ねる立場にいた人が、ある日を境に普通の人になるのは精神的に厳しいものがあるだろう。昔の仲間に会えば、「あ、部長、お懐かしいです」などと声をかけてくれるだろうが、他に呼び方がないからで、下手をすると名前を忘れていることだってある。公民館の講座に男性参加が少ないのは、自分を初心者として認めて、不慣れなことを学ぶのに苦手な思いが働いてしまうのが背景にあるのではないだろうか。

 私は、「元〇〇学校校長」と過去の役職で紹介されるのは嫌で、現役でいたかった。ささやかな仕事でも自分の責任のもとに行う仕事をして、できるものであれば社会の役に立っていたかった。今日のセミナーのように、講師として働けるのは自分のキャリアを活かせることでありがたい。教育委員会に勤めていた時は、同じように公民館で指導する機会があっても、それは業務の一つで、特別に手当がもらえるわけではなかったし、仕事上の役職名で紹介された。勤めていた課で段取りはしてくれるので責任もずっと軽かった。だが今は、自分で学び、アイデアを練って、喜ばれる内容で計画しないと人は集まらない。参加してくれた人に「よかった」と言ってもらえるように、責任や緊張感も重い。講座がある日は、頭の中でシミュレーションしていて、家事など他のことをしていても気持ちは指導に当たっている自分の姿から離れられない。稼ぐというより、社会の役に立つ存在でありたいと思う。