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男性の退職後に自分の立ち位置をどう見つけていくか

 今日は3月の練習ストップ以来久しぶりの男声合唱団 ZENの再開だった。とりあえず全員で集まって、今後の取り組みについて相談した。来週からは、団員を半分ずつに分けての活動開始となる。なんとか順調に進み、来年10月の第9回演奏会を迎えたいものだ。

 しかし、男性ばかりで80名を超える合唱団活動がこの地方都市で運営されていることは日本全体を見ても珍しいことだろう。まだ現役で働いている人も多いが、基本的にはシニア世代中心だ。女性中心の公民館活動が多い中、これは驚きだ。男性の退職後の生活を見た時、心配なのは自分の立ち位置を見つけられずに家でなんとなく過ごしてしまう人たちだ。それなりに健康に気をつけ、決めた運動などで体を維持しようとしている人もいるが、女性のような仲間との交流は薄くなりがちだ。脳科学の立場から見ると大変重い課題だ。

 米国の心理学者コーエンの研究によると、退職後の生活で最も不満を抱えるのは「現役時代に卓越したキャリアと築いていたのに、退職後にそれに匹敵する充実感を得られない人」だとのこと。会社組織の中で、役職を持っていた人が、ある日を境にそれがなくなり、普通の人になる。しかし本人はその根本的な部分でそれを普通に受け止められない。

「パターナリズム」という言葉を聞いたことがるが、「なんでこんなことができないのだ」とか「もっとこうしなくてはいけない」など、周りに人に自説を説いて嫌われるのは、その自分のこだわりを大切なものとして捨てられない人だ。自分のやり方(パターン)が何よりも大切なのだろう。地域の住民総会に一住民として参加したことがあるが、役員経験者から「もっとこうしなくてはいけない」式の発言がある。その強い表現に、今、区の役員を頼まれて受けている人たちの、「人の悩みも知らないで」と嫌な表情を垣間見ることもある。誰も役員を引き受けたくなくなるなと感じたのは私だけだろうか。

 男声合唱団ZENには社会的に活躍した人が大勢いるが、運営面でそれぞれの得意分野を生かしながら協力してきたから、この大きな組織が動いているのだろう。社会教育の場で、男性もその個性を生かしながら、自分の存在感、アイデンティティを再創造していけるにはどうしたら良いか、その検証の場としてよく見つめていきたい。