歌と健康セミナーで、“賢く年を重ねる七つの秘訣”(参考図書「年を重ねるのが楽しくなる“スマートエイジング”という生き方」扶桑社新書)が大きな柱になっている。
その七つの項目の中に、昨日ふれた健康な体作り(有酸素運動・筋トレ)と並んで「脳トレ」がある。音読が例に上がっている。合唱することも同じだろう。歌詞を読み、声に出して表現し、さらにそのテーマとなっている場や人に思いを寄せるので、かなり効果はあるのではないかと思う。さらに指揮者を見て判断し、周りの仲間の声に気を働かせ、かなりいろいろなことに頭を働かせる。暗譜するのはもちろん大変な能力を使うはずだろうが、楽譜を持っていても、見るのはほんの一瞬だ。とても脳を使う。ぜひ大勢の人たちに経験してほしいものだ。単に椅子に座って、懐かしい歌で時間を過ごすのとは違うシニア世代の身近な発展の場だと思う。
もう一つ参考にしている文献に「脳科学は人格を変えられるか」(文藝春秋)があるが、その中に面白い内容があった。極めて複雑で迷路のようなロンドンの街のタクシードライバーは、海馬(位置把握能力に関わる脳の組織)の肥大度が、運転経験年数に比例しているというのだ。ベテランほど大きくなっている。海馬は、短期記憶、記憶の入り口で、認知症に大きな影響を及ぼす。古い記憶は、大脳に保管されるので、認知症の人が、さっきのことや今日何やるかなど覚えていないのに、若い頃の思い出はしっかりしている例はよく聞く。海馬は認知症対策に大きな存在だ。音読のような瞬時に判断して表現に結びつける活動は海馬を使い、脳のいろいろなところとの連携で行われるから、単に目で追うだけとは違う。
私は、血圧や糖尿病対策で、よく散歩に行くが(最近サボっている)、できるだけ、知らない道を見つけては歩くようにしている。長く住んでいる地域でも案外知らない道がある。「へー、あの幼稚園はこんなお墓の裏にあるのか」「あの家は、石垣を積んで高くしてある。昔の水害の教訓を先祖から受け継いでいるんだな」など面白い。夜、腹ごなしに歩いたとき、用水路脇の小道を歩いていたら、草むらになっていて進めなくなって、暗い駐車場に上がって別な道に出ようとしたら、入ってきた車に怪しがられたのはまずかったが。ウォーキングはよく言われる有酸素運動だが、知らない道を探検しながら歩くのは、海馬の発達にとても効果がある。認知症対策としても良いわけだ。